その日の夜、愛子はトイレにと布団を出た
院長室の前を通ると話し声がした
「……そっかそっか、愛子はかわいいな」
「まぁ、でも
愛子はいつもニコニコと笑う子だったから嬉しいね」
「この施設の中だけでなく、外も見てみた方がいいのかもしれないね
きっと、勉強になるしいい経験にもなる」
なんて話していた
愛子は話の内容をよく理解しないままドアを開けて
「いと、ずっと、ここにおりたい…」
と、ポロポロと涙を流した
誠が慌てて
「愛子、泣かないでおくれ、
確かに愛子は大きくなったらここからいなくならなくてはいけない、
けれどね、それはとても嬉しいことなんだよ?
愛子を愛してくれる人が見つかったら
愛子はここを出ていく
なぁに、泣くことはない
それが永遠の別れではないからね?
それと、今すぐにの話ではない
まだ何10年先の話だよ
愛子が大好きな人を見つけるまでの話だ…」
と、あやめた
愛子は泣きながら
「いちゅか、グズッ
皆みたいに愛子もみんなを残して行くん??
ズズッ!
もう、会えんのやろ??
やぁだー!」
と、駄々をこね始めた
寝ぼけていたのかもしれない
愛子は捨てられてしまうと思い泣きわめいた
もう、とっくのとうに親に捨てられているのに………