「私も貴方には是非に会いたかったですよ。やはり顔合わせの前には一度会っておきたいですからね。」
「顔合わせとは?」
優也は何のことだろうかと会長の顔を見た。すると会長は優也に悪びれもせずに終始笑顔のまま杉浦と話をしていて優也の顔を見ようとはしなかった。
その態度の違いに優也は当然の如くこの場の居心地の悪さに早くこの部屋から出て行きたかった。
「黒木さん、もし今度の見合いが上手くいけば私とあなたは家族になる訳ですから、これからは仲良くやってきましょう。」
杉浦の意味不明な言葉に優也は戸惑うばかりだった。いったいこの男が誰と見合いをすると言うのか。そして、見合いが上手くいけばというのは結婚を意味する。その結婚相手というのが誰なのか検討が付かなかった。
「黒木、茜にお前から話しておくんだぞ。美佐と光一君の離婚がもうすぐ決まる。」
その言葉に優也は衝撃が走った。
優也はこれまで何年も美佐と光一を離婚させようと美佐に求婚してきた。それなのに会長は手を尽くすことをせずに優也の求婚を面白がるように見ていただけだった。
「美佐さんに命令したんですか?離婚するようにと。」
優也は黙ってはいられなかった。自分が成し得なかったことをいとも簡単にやってのける会長が憎らしくも見えた。