「こちらの方はどなたですか? 随分楽しそうなお話をしていらっしゃるようですが。」
茜と結婚し身内になった優也でさえ、会長との会話は緊張し未だに打ち解けた会話は出来ていないのに、この男はそんな優也より遥に会長とは慣れ親しんだ間柄の様に振る舞っている。
どんな関係にあるのか優也が興味を持たないはずはない。だから、真っ先にその関係を聞こうとした。
「杉浦君、彼は黒木優也と言って君の提案したあの商品を開発している開発課課長をしているんだよ。」
「ああ、そうでしたか。でしたら、もしや、お孫さんの茜さんのご主人では?」
極秘扱いの入籍を何故この男が知っているのか?!と、優也は流石に動揺してしまった。茜との結婚は誰も知らないはずで身内のみが知っている。それを部外者のこの男が知っているのはどういう事情があるのかと会長を横目で見ていた。
「あの商品の提案者? 今日はお忙しくてお会いできないと伺っていましたのにお会い出来て光栄です。」
敢えて茜の夫としての会話は避けていた。今は茜の夫ではあるが、何時までもその関係を続ける気などなかった優也はその話題を避けようとしていた。