その日一日優也は仕事に集中出来ないままその日の仕事を終えてしまった。約束の時間になったと時計を確認しながら優也は帰り支度を始めると会長室へと向かった。
会長室へと向かうとそこには会長と見知らぬ男がソファーに座って談笑していた。笑い声が聞こえるその部屋へ秘書の案内でドアを開けてもらった優也は笑い声がする部屋へ足を踏み入れるのを躊躇してしまった。
「おお、黒木来たか。こっちへ来い。」
「失礼します」
かなり上機嫌な会長は一人掛けのソファーに深々と腰かけると、その隣にある同じく一人掛けのソファーへ座るように促した。優也は言われるままにそのソファーへと腰かけると会長が面談している男の顔をマジマジと見ていた。
不躾とは思いながらも会長が上機嫌になるような相手はどこのどいつかと興味のあった優也はその男を頭から足の先まで見てしまった。そんな優也の余裕のなさに鼻で笑った男は会長同様深くソファーに座り直すと腕を組んでは優也を見ていた。
相手の男の態度が気に入らない優也は眉間にしわを寄せたくなったが、ここは会長の機嫌を損ねることが出来ず無表情のまま取り繕っていた。