「優也さんはお風呂入って休んで!たまには私が一人で後片付けするから。」
優也は茜の痛々しい手が目に入ると後片付けを任せることなどできなかった。何も出来ない茜の将来を悲観して今から家事仕事の手伝いをさせようと思ったものの、根っからのお嬢様であり舞阪家の跡取り娘なのだから家事など出来なくて良いのだと思えてしまった。
「茜、学校の準備があるだろう?それに宿題も。茜が料理してくれたから片づけは俺がやるよ。」
「ダメよ! 優也さんは疲れているのよ。倒れられたら困るの。これくらい私に任せて。ね!」
可愛い笑顔を向けられては嫌とは言えない優也。つい、茜に任せて後片付けをさせてしまった。二人分の食器などあっという間のことなのに、それすらも茜にさせたくなかった。これ以上白魚のような綺麗な肌を痛めて欲しくなかった。
鼻歌混じりで洗い物をしていた茜を優也はソファーに座りながら眺めていた。幼い子どもの様に感じるもエプロン姿でキッチンに立っている茜を見ていると大人の女の様に見えてしまうのだから不思議なものだった。
高校生という年頃は子どもでもなく大人でもない微妙な年齢なのだと優也は微笑みながら茜のエプロン姿を眺めていた。
丁度、茜が洗い物を終えた時だった。食卓テーブルの上に置いていた茜の携帯電話から着信音が鳴り響いたのは。茜は急いで携帯電話の所へ駆け寄り誰からの電話なのかを確認していた。
画面で名前を確認すると、何故か一度優也の顔を見てから通話ボタンを押した。