その夜の夕食は茜が一人で頑張って作ったクリームシチューとホットケーキだ。

 カレーライスを何度か優也と一緒に作った経験があるためクリームシチューならば大丈夫だろうと頑張った茜だったが、カレーライスと同じ材料だったため、クリームシチューなのに肉は牛肉が入っていた。

 牛肉ならばカレーそっくりなビーフシチューと言うものがあるが、たぶん、茜の頭にはそんなメニューは無いのだろう。そう思いながら一口スプーンを口へ入れ込むと優也は思ったより美味しい出来栄えに笑顔になった。


「上手いよ、一人で作ったのに凄いじゃないか。」

「本当にほんと?!」

「ああ、美味しいよ!」


 野菜を入れる順番が違っていたのだろうが、一応人参は火が通っていて柔らかく煮えている。ジャガイモは一番最初に入れたらしくかなり煮崩れしていた。玉ねぎはもともと生でも食べれるから少々ゴツゴツしていて固くても食べられる。

 お嬢様の茜にしては上出来だ。

 ホットケーキも少し焦げ目はついているが食べられないことはない。

 嫌々始まった結婚生活なのに茜には申し訳ないことをしていると、茜の料理に優也は辛いものを感じた。擦り傷だらけの手で痛々しくも食事をする茜を直視出来ずに俯いたままただ無言で食べ続けた。

 そんな無言のまま食事をする優也は体調が思わしくないのだと茜はかなり気にしていた。日頃、仕事より茜を優先させ、炊事も洗濯も全て優也に頼りきった事で相当な負担をかけてしまったのではないかと、茜はこれ以上優也に甘えてはいけないと思えた。