茜に連れて行かれた売り場では、如何にも茜の好きそうな可愛いモフモフしたクッションがあった。パステルカラーもあれば真っ赤や真っ黒のシンプルな四角い形のモフモフクッションが所狭しと並んでいた。

 人気商品なのか大量に並べられていたそのクッションは、実に抱き心地の良さそうなクッションに見えた優也は、しっかり手に取り抱き締め乍らその触り心地を堪能していた。

 見た目通りの肌触りはまるで毛布のようでフワフワしていて何とも言えない触り心地が最高に気持ち良い。


「これ、お揃いで買おう?」


 モフモフクッションに頬擦りする茜はまるでお伽の国のお姫様だ。そんな可愛いお姫様に「買って?」と言われて買わない男はどこに居る?!

 茜のお姫様笑顔にはどうやら優也は弱い様だ。渋々だがモフモフクッションを二つ買うことにした。


「このピンクは私のね。で、こっちの赤が優也さんね!」

「何で俺が赤?」

「情熱の赤! 優也さんにピッタリ♪」



 優也は自分が情熱的な男だとは思ったことがなかったが、茜にはそう見えるのだろうかと少し頭を捻らせていた。しかし、何度頭を捻ったところでそうは思えなかった。

 結局は、茜のモフモフクッションのお蔭で茜の学校友達という男について何も聞けずに終わった。


 もしかしたら、茜に上手い具合に話を逸らされたのか?と、優也なりに考えてしまった。