「ねえ、せっかくだから何か買って帰ろうよ。面白いの沢山あるんだよ。デートの記念にどう?」
茶目っ気たっぷりな茜に優也の顔もしっかりほころんでしまう。あどけない茜に癒される様でそんな茜をずっと見ていた。すると、茜は優也の顔を覗きこんではにっこり微笑んだ。
「買う? それとも買わないの?」
「買うよ。買って帰ろう。」
「うん!」
会長からの命令で始まった結婚生活だけれど、茜は二人の時間を大切なものとして考えているのだろうかと優也は少し胸が痛くなった。
前向きに考えている茜に対し自分はどうだろうかと思うと後ろめたさで茜をまともに見れなくなる。
「ごめんな、茜」
ポツリとそんな言葉が優也の口から出ていた。
「なあに?」
「いや、何でもない。どれを買うんだい?」
「これなんかどう? リビングに置くのに可愛いでしょう?」
「・・・・・」
茜が選んだ置物とは大きな陶器製の犬の置物だ。ゴールデンレトリバーの様な大型犬の等身大の置物のようだが、あまりの大きさに流石に優也は「買う」とは言えなかった。
「買うなら他のにしなさい」
「えー、ダメなの?」
「じゃあ、本物の犬は?」
優也はホームセンターなどに茜を連れてくるものではなかったと後悔してしまった。