それから、数日間、まだ新婚旅行と称しての生活を送る日々は、宿泊旅館代わりに自宅マンションで寝泊まりし、食事は毎日レストランなど美味しそうな所へと出かけた。

 ついでに買い物もしようとショッピングモールへ出かけたり、茜には珍しいディスカウントストアやホームセンターなどへも連れて行った。

 

「優也さーん、これ、すごいよ!! でっかい扇風機!」


 茜をホームセンターへ連れて来たのは正解だったようだ。無邪気に楽しそうにしてくれる茜を見ると優也はホッとしていた。

 優也に会長自ら連絡がきたのを思えば、きっと、茜の携帯電話へも連絡がいく可能性は大だ。そんな時、優也が連れない態度を取っていたり、夫らしいことを何もしていないとそのまま会長にバレてしまう。それだけは防ぐ必要があった。


「ほらっ! これ! ウチのマンションのリビング広いからこういうの欲しいね。インテリアになりそう♪」


 茜がはしゃいで見ていた扇風機とは工場用の特大扇風機だ。一般家庭用のではない。第一、空調設備が整った高級マンションにそんな工場用の扇風機を置ける訳ないのにと、優也は乗り気な茜を見てかなり頭痛がした。

 そして買いかねない茜の様子に急いでその売り場から離れた。

 駄々っ子の様に物欲しげな目で見ていた茜の腕を引きながら他の売り場へと即移動する優也は父親さながらだ。