「茜、お母さんへの手料理を考えるのに外食をしないか?」

「外食?」

「そう。外で食事をすればもしかしたらお母さんの好きな料理が見つかるかもしれないよ。」


 優也の思いつきなのだろうが茜は反対はしなかった。

 きっと親想いなところを考えてそんな提案をしてくれたのだと思えた茜は嬉しくなった。


「うん、いいよ。じゃあ、どこへ行く?」


 茜の嬉しそうな表情を見れるのが一番落ち着く優也は行き先はどこでも良かった。

 優也は茜の為だけでなく、自分の為にもどこでもいいから茜と出かける必要があった。



 温泉旅行から戻って直ぐに会長から連絡が入った優也はかなり憂鬱な気分だった。会長自らの電話を受けるとは思いもよらなかった。


『茜の希望だから何も言わんが、新婚旅行を一日で戻ってくるなどけしからん。旅行の代わりに茜をいろんな所へ連れて行ってやれ。しっかり茜を甘やかしてもう少しお前に従順になるように躾けるんだ。女房の尻に敷かれるような男では会社は任せられんぞ。』



「会長も無茶なこと言うよな・・・・・」


 優也は結婚さえすれば一安心かと思っていたが、そうは問屋が卸さないようだ。頭が痛い優也としては、まずは茜を外へ誘い出し新婚旅行ならぬ新婚デートをする必要がありそうだ。