「茜、ソファーが壊れるからもっと静かに座りなさい。」

「壊れたっていいわよ。また新しいもの買えばいいんだから。」


 茜の機嫌が悪いとどうやら性格まで凶暴になるようだ。そんな茜を見て優也はクッションをソファーへ放り投げた。


「もうそのクッション要らない」


 優也との生活に慣れてきたのか少しずつ茜の本性が出だしたと感じた優也は、いつまで今の生活が続くのだろうかと気がかりでもあった。


「優也さん、洗濯物洗ったから乾燥機にかけたよ。」

「ああ、ありがとう。洗濯は上手になったよな。」

「うん、後は料理だよね。あれ、絶対に私には向いてないわ。」


 そう言い乍ら、ランドリールームからキッチンへとやって来た茜は冷蔵庫の中を物色しながら、夕飯は何にしようかと考えていた。

 そんな茜の姿を見ると、このマンションへ来たばかりの頃に比べるとかなりマシになったと優也なりに喜んでいた。


「だけど茜は上達したよ。料理も、洗濯も。」

「優也さんが根気よく教えてくれるからね。感謝してます。」


 素直になられると茜が可愛くて優也は困ってしまう。可愛い子には旅をさせよと言うが、とても、今の優也には茜をそんな風に扱えなかった。