「あなたが結婚した相手は茜なのよ!茜を傷つけるようなことがあれば私は許さないから!」


 美佐は祖父の命令とはいえ権力欲しさで母親から平気で娘へ乗り換えることができる優也を信じていなかった。


 そんな優也と結婚させられた茜が哀れでならなかった。だから、せめて、茜が喜ぶことならと一緒に旅行へ来たが間違っていたと改めて気付いた。



「これ以上私に構うのなら私は一人で帰ります。」



 優也は大きな溜め息を吐くと穿いていたスラックスを脱ぎ出した。


 美佐はギョッとして枕を優也に投げつけた。



「俺は浴衣に着替えているだけだよ。君の方こそ意識し過ぎじゃないの?」

「私には光一さんがいるの!変な気を回さないで!」

「冷えきった夫婦仲なのは知ってる。茜が生まれて仕方なく、・・・うわっ!」


 美佐はもう一つの枕を優也の顔めがけて投げつけた。例え事実であってもそんなことを他人の優也に言われたくなどなかった。

 投げられた二つの枕を美佐のベッドへ放り投げると、優也は浴衣に袖を通してみた。おもったよりサイズが小さくて笑っていた。


 無神経な優也に美佐はかなり腹立たしく眉間にシワを寄せていた。