「お母さん、大丈夫?」

「茜、玄関ホールの横に自販機コーナーがあっただろう?そこから冷たいポカリを買っておいで。なければ水でも構わないから。」

「うん、分かった。買ってくる。お母さん、待っててね!」



 茜は急いで自販機コーナーのある玄関ホールへと走った。パタパタとスリッパの足音を響かせながら。


 優也はシワになったシャツを眺めているとそれを脱いでしまった。美佐が顔を背けると優也はわざとらしく上半身裸のままでいた。

 美佐は頭からすっぽり布団を被ると優也はクスクス笑いながら部屋の中を見渡した。

 ベッドの奥にクローゼットらしきものがあるのに気付くと優也はそのドアを開けた。



「こんなところに浴衣がある。君もどうだい?こっちの方が涼しいから湯中りには丁度良い。」

「私には構わないで。茜だけを考えてくれないかしら。」

「考えてるよ。茜は大事に育てられて何も知らないお嬢様だ。それも、かなり子供っぽい。もっと、常識のある子に育てなきゃ何れ嫁にいけなくなる。」

「何言ってるの?!あなたが嫁に貰ったんでしょう?!茜とは、その、」



 美佐は恥ずかしくて口がもごついてそれ以上言えなかった。


 優也は美佐が何を言いたいのか分かっていた。だから、ハッキリ言った方がお互いのためだと感じた。


「茜とは寝るつもりはないよ。あの子は君の子だ。本来なら俺達が、」

「よして!!」


 美佐は優也の言葉を聞くつもりはなかった。