本気で心配する茜に余計な不安を与えたくなかった美佐は「大丈夫よ。直ぐに良くなるわ」と、こんな時も笑顔を忘れなかった。そんな笑顔が痛々しく感じた茜は温泉から出ると、丁度、そこに居合わせた優也を呼び止めた。


「優也さん、お願い。お母さんを運んで!」



 茜の辛そうな言葉に何があったのだろうかと驚いた優也は肌蹴たシャツもそのままで茜達の所へと駆け寄った。

 
 お湯でしっかり体が温まった優也はシャツのボタンを留めずに袖を通しただけの状態で温泉から出ていた。逞しい胸が露出するその格好に茜も美佐も目が釘付けになっていた。


 親子の同じような瞳を見て優也は思わず笑ってしまった。


「笑いごとじゃないのよ!お母さんが湯あたりしたみたいなの。お願い。」

「ああ、いいよ。」


 優也は言われるまでもなく美佐を抱きかかえると部屋まで連れて行く。美佐はこんなところで優也にお姫様抱っこをして貰う訳にも行かず、「おります!」と言い続けていた。


 けれど、茜に「ダメよ!」と言われてしまうと部屋へ着くまで下ろされることはなかった。


 逞しい優也の肌が直に美佐の頬に当たると美佐は目のやり場に困ってしまう。温泉に入った後の優也の温かい肌が美佐の肌を通して伝わってくる。


 美佐は夫である光一とはまた違った温もりに心臓の鼓動が大きくなってしまった。娘の夫なのにと思いながらもその鼓動は大きくなって優也へと伝わってしまう。


 優也は恥ずかしそうに頬を赤らめた美佐が可愛くなってつい抱きしめる腕に力が入ってしまった。