「あの、ちょっと、優也さん。お話があります。茜は外に出ていなさい。」

「いえ、そんな必要はありませんよ。今回の旅行は名ばかりの新婚旅行ですからね。茜の第一の目的はお母さんの貴方に日頃の疲れを癒して欲しいのですから。」

「けど、それじゃあ、」

「お母さん、遠慮しないでよ。優也さんだって喜んでいるんだから。こんな風に家族が一緒に居れることは大事な事だからって賛成してくれたのよ。」


 優也が賛成したと聞いた美佐はハッとして優也の顔を見てしまった。車の運転中から感じた優也の視線は間違いなく茜ではなく自分に向けられているものだと分かった美佐は尚更一緒に居ることなど出来なかった。


 頭を左右に振る美佐を見て優也は「なら、俺達も帰ろう。」と言いだした。


 二人だけの旅行を楽しめば良いのにと思っていた美佐だが、そんな態度を見せる優也に二人は夫婦になれていないと分かってしまった。


 だから、優也も茜も一緒に旅行へ来て欲しいと平気で言えるのだ。これまで一緒に暮らしていたはずなのに二人はどうしていたのだろう?と美佐は疑問に思ってしまった。