部屋が空いていない以上は諦めるしかないと優也は平気な顔をして言うが、新婚夫婦の部屋に一緒に泊るのは美佐にはかなり気が重かった。
一緒に案内されたコテージへと向かったものの、コテージの入り口まで行くと美佐の足は止まってしまった。
「うわぁ、すっごい。この部屋ってキレイ! 優也さんはどっちの部屋で寝るの? 私とお母さんが一緒の部屋でもいい?」
「ああ、それでいいよ。」
「ありがとう!」
娘夫婦のそんな会話が聞こえてくると尚更のことコテージの中へとは入れなかった美佐は荷物を握り締めていた。そして、やはり帰ろうと決めると茜を呼んだ。
「どうしたの? お母さん、こっち来てみて。お庭が綺麗なのよ。私とお母さんの部屋からは良く庭が見えるのよ。」
まだ子どもな茜には新婚旅行の意味が分かっていないと美佐は心苦しかった。今夜は二人にとっては大事な時間なのだからと美佐は一緒の部屋になど眠れるわけがない。
「茜、やっぱり、部屋が取れないならお母さん帰るわ。」
「ええ?! どうして?! 私とお母さんが一緒の部屋なんだからいいじゃない。遠慮しないでよ!」
遠慮も何も新婚旅行の新婚夫婦の寝室で一緒に眠れるわけなどないのだ。そんなことも茜は分からないのかと美佐は半分呆れてしまいそうになった。