かなり疲れた優也を見てまた茜が閃いた。ソファーに横になる優也の前に腰を下ろすと優也の顔の前に両手で頬杖をついた。
優也は自分の顔のすぐ目の前に茜の顔がいきなり現れたことで驚いてしまい頭を後ろへと動かしたが、すぐ後ろはソファーの背もたれがあり逃げられる隙間はない。
こんな近すぎる距離に冷や汗をかきながら優也は茜の顔を見ていた。
「ねえ、温泉に行かない?」
「温泉?」
優也は意外な言葉に目をパチクリさせた。今時の女の子は温泉が好きなのか?と優也は茜の平凡さにも驚いていた。
そもそも年頃の女の子の考えることなど優也には分からないのだから、茜の希望する行き先を聞いたとしても、きっと、どんな場所でも優也は驚くだろう。
「いいけど・・・・何故、温泉?」
「だって、疲れているようだから。温泉だと心身ともに疲れをとることが出来るでしょう? それに、普通は温泉って美肌効果もあるんでしょ?」
「でも、それだとかなり予算が余らないか? 会長は納得するだろうか?」
「なら、お願いがあるの。」
優也は茜に「お願い」と言われれば断れるはずがない。まるで娘に懇願されているようで、是非とも茜の望みは叶えてやりたいと思ってしまう。
「いいよ」
「お母さん達も誘って良い?」
優也は茜の言葉に嫌とは言えずに「いいよ」と笑顔で答えてしまった。