「大丈夫か?」

「うん、大丈夫。ちょっと、お母さんを思い出していただけ。」



 幼気な高校生の茜を突然親許から引き離し、祖父の命令とはいえ殆ど面識のない男と結婚させられたのだから、茜の悲しむ気持ちも優也には理解できた。だからこそ、茜には辛い思いをさせたくないし、美佐の娘なら特に幸せな人生を送って欲しいと思っている。


 けれど、やはり、茜を幸せにしてくれる男は別の所に居るものだと優也はそう感じていた。


 だから、それまで茜を大事に育てるのが自分の役目だとそう思っていた。



「茜、無理しなくてもいいんだよ。実家へ行きたい時は遠慮なくいつでも遊びに行けばいい。泊りたい時は好きなだけ泊って来ればいいんだよ。」

「ありがとう」



 結婚した夫は普通ならば、妻が実家へ帰るのを快く思わないのだと思っていた茜。だから、優也にそんな言葉を言わせたのは自分が幼い所為だと思った。


 それに、そんな気持ちにさせた自分にも問題があるのだと茜は、少しでも優也にそんなセリフを言わせない様に努力する必要があるのだと思った。