「うん!作る! 一緒に作るよ! 何作ろうか?!」
「茜が食べたいものでいいよ。」
「優也さんは何か食べたいものってないの?」
茜は自分より優也の好きな食べたい物を聞きたかった。せっかく縁あって結婚したのだから、夫である優也の好みの食べ物くらいは知りたいと思った。
けれど、優也も同じで自分よりは茜の好きな食べ物を食べさせたくて茜を優先した食事作りをしたかった。
「茜が好きな食べ物ってなに?」
「優也さんこそ好きな食べ物ってなに?」
二人してお互いの好きな食べ物の聴き合いっこをしても延々と話は終わらない。そう思うと思わず二人とも吹き出して笑ってしまった。
「じゃあさ。お互いに好きなおかずを一品ずつ作ろうか?」
「え・・・と。」
「作る」と言われると茜は何も出来ない自分が恥ずかしくなって俯いてしまった。膝の上に乗せた両手がモジモジとしている。そんな茜を見て優也は、料理の出来ない茜に「作って」と言う言葉を使ったのは不味かったと少し焦ってしまった。
どうやれば茜に嫌な思いをさせずに料理を作らせることが出来るのか。当面は自分がメインで料理をしてその手伝いを茜にさせるのが一番良い方法だと思ったしそれしかないとも思えた。
本当に、父親の料理を手伝う娘の光景だと、優也の頭の中ではそんな映像を思い描いていた。