「茜さんはまだ高校生ですよ。早すぎると思いませんか?」

「アレも高校生で茜を生んだ。あの母親の娘だ早くもないだろう。」

「美佐さんは貴方の娘ではないですか。彼女を信用していないんですか?」



 優也の言葉に会長は声を上げて笑うとソファーに深く座り直し足を組んでは腕を肘掛けに掛けた。


 そして、優也の顔を見るその視線は先ほどまでの優しい表情とは違いかなり厳しいものへと変わっていった。



「私が望んでいるのは私が必要とする後継者だ。私には美佐しかいない。その美佐が選んだのがあの男だ。しかも、生まれたのがまた女の子一人だ。このままでは会社の後継者に恵まれないことには会社を手放さなくてはならなくなる。その為に私の眼鏡に叶った君を育てているのだ。」


 息子のいない会長はどうしても男子が欲しかった。娘の美佐はまだ若くこれからも子どもを産める年齢にあるのに、美佐夫婦には茜の後には子どもが生まれない。


 そこで目を付けたのが孫である茜だ。会社の為にも会長自身が納得のできる後継者を育てる為にも、早くに茜には後継者の男子を産んで貰わなければならないのだ。


 その事情は優也は理解できるが、それでもそれを茜に望むのはあまりにも可哀想過ぎると優也は納得出来ずにいた。