茜はいつの間にかベッドの上で眠っていた。けれど、美味しそうなカレーの匂いが部屋の中まで漂ってくるとその匂いにつられ目が覚めてしまった。


「あ、晩ご飯だ。おじいちゃんの事だから家政婦雇ってくれたんだよね?」


 臭いにつられた茜は部屋を出るとクンクンと犬のように鼻を嗅いで匂いのもとへと辿っていった。


 リビングへと入ると美味しそうな匂いは更に部屋中に充満しお腹がギュル~っと鳴き出した。


 どんなに悩んでも、どんなに眠っていても時間になればお腹は減るものだと分かった茜はリビングの奥にあるダイニングテーブルに座るとキッチンを眺めた。


 すると、そこには家政婦ではなく優也の姿が目に入り茜は驚いていて飛び上がった。



「ええっ?!もしかして、このカレーって優也さんが作ったの?!」

「待たせたね。お腹減っただろう?」

「あの、もしかして家政婦いないの?」

「会長は君に何不自由のない生活をさせたかった様だよ。だけど、俺が断ったんだ。でも、心配入らないよ。独り暮らしが長い分一通りは俺が出来るから。」


 茜にとっては家政婦がいないのが想定外だった。


 家政婦がいれば家事仕事から逃げられると期待もできたが、これでは妻が家事をしないわけにはいかない、と、茜は新婚生活が地獄のように感じた。