夫婦なら当然のことだと自分に言い聞かせていたけれど、それでも好きでもない人に純潔を捧げる覚悟はできない。


　覚悟を決めろと言われたら覚悟出来るものなのか、それは、茜だけでなく優也も同じ気持ちなのだろうかと思い悩んでしまった。


　茜はベッドの上に座り込んだまましばらく動けずに悩み続けていた。


　そんな茜と同じようにリビングにいた優也も頭を抱え込んでソファーに座っていた。


　しばらく動かなかった優也だがソファーに深く座り直すと腕を組んで天井を眺めた。その顔はいかにも憂鬱そうな面持ちで何度も溜め息を吐いていた。


　そして、会長である茜の祖父に言われたことを思い出していた。



『お前は茜の夫として最善を尽くし茜が卒業するまでに後継者を生ませることだ。』



「茜と結婚するとは想定外だったな・・・」



『わかっているな、お前の望みを叶えたかったら茜に男子を生ませるんだ。』



　祖父に言われたことを何度も思い出していた。思い出せば出すほどに優也は溜め息が出るとソファーに寝そべってしまった。


　俯いたまま頭を抱え込むと唸りだした優也は「晩飯何にしよう？」と、寝言のように呟いていた。