「これも全部おじいちゃんが用意してくれたのね。」


 茜は祖父からの援助がこの結婚の条件ではないだろうかと思えた。けれど、この際、この結婚の経緯を教えてほしいと思った茜はリビングへと戻った。


「隠さないで全部教えてほしいの。」

「まずは何から話したほうが良いのかな?」

「私はあなたの事は何も知りません。そこから教えて下さい。」



 茜の真っ直ぐな瞳に優也は少し考えた。腕を組みながら暫く目を閉じていた。何を悩む必要があるのだろうかと思わせる態度に茜は少し苛ついてしまう。


 革張りのソファーに座ると足を組んだ茜も同じように腕を組んでは優也を見上げた。


 優也は茜がソファーに座るのを見ると窓の方へと行き窓から外を眺めていた。そして、茜に見られたくないのか目線を逸らしたまま話し始めた。


「俺は舞阪商事株式会社で商品開発課の課長をしている。」

「おじいちゃんの会社は商品の製造販売はしていないでしょう?」

「いや、一つだけ商品を製造販売していてね。その開発課に属しているよ。」



 優也は視線を茜に戻した。足と腕を組んで余裕を見せていた茜の表情に驚きの様なものが感じられると優也は組んでいた腕を下ろした。