「しゅー」
「なに」
赤く染まる由香を観察していると、隣からみどりが肩を叩いてきた。
「靴下間違えたー」
「は?」
みどりが履いている白のハイソックスは、たしかに左右でワンポイントの色が違う。
だから、何だと言いたいんだろうか、こいつは。
「なになに、みど、靴下間違えたん?」
「やらかしたなー」
いつの間にか、由香も達郎もこっちを振り向いているし。
「みどり」
「お?」
「空気読め、空気」
そう言ってデコピンをひとつ。
「うがっ」
みどりがまた奇声をあげて、額をさすっていると、チャイムが鳴って先生が入って来た。
「はーい、じゃあちょっと大事なプリントから配るわー」
全員が席に着いたのを確認するなり、先生はそう言ってプリントをまわす。受け取ってそれに目を向ける。
「今配ったの、お泊り教室の承諾書ねー。月曜までにハンコ押して持って来てー」
お泊り教室、ってあれか。この前、みどりたちが言っていたやつか。
ぼんやりと思い出しながら、文字列をたどる。
日程やら持ち物やら、その他もろもろ。それを見るかぎり、とくに変わったようなものは組み込まれていなかった。
良かった。木登りの時間とかあったらどうしようかと思った。
ほっと息を吐いたと同時、隣の席のちんちくりんは突然立ち上がって。
「せんせー、バナナはおやつに入りますかー?」
「みどは一回黙ろか」
……このちんちくりんの脳内はどうなっているんだ。