「あーあー、柊もみどもびしょびしょやないのー」
教室に入ると、由香がタオルを持って、待ち構えていた。
早速みどりの頭をわしゃわしゃと拭く由香を一瞥して、俺は学ランを脱ぐ。
「達郎」
「ん?」
「ハンガーとかある?」
水分で、ずんと重くなった学ランを片手に尋ねると、達郎はロッカーを探り始めた。
「お、あった、これでいい?」
「ありがと」
有り難くそれを受け取って、窓辺に吊す。裾が濡れたズボンは、折り曲げて丈を短くした。
「ん、よし」
「ありがとー」
由香に髪を拭いてもらって、みどりは満足げに笑う。
そして、履いていた靴下をビニール袋に入れて、新しい靴下に替える。
「それにしても暑いな。もう梅雨か」
「ねー。むしむしする」
「由香の力でどうにか出来やんの?」
「たっくんの力で頑張ってー。私にそんな力はないわー」
由香はそう言いながらも、下敷きで達郎を扇ぐ。
「あー涼しい涼しい、ありがとな」
「はいはい」
くしゃり、由香の前髪を軽く乱して、白い歯を見せて笑った達郎。
由香はそっと目を逸らしつつ、下敷きを机の上に置く。