生い茂った木の葉で、少しだけ雨は遮られたものの、不規則にバラバラと大粒の水滴が降る。

きっと、雨の重さに耐え切れなくなった木の葉から落ちてくるのだろう。

蓄積されている分、水滴の大きさは並大抵のものじゃない。




「ほっ」


突然、みどりがそんな声を出したかと思えば、トンッと軽い音がして。


次の瞬間、バラバラと水滴が落ちてきた。


「うわっ」


慌てて傘で凌ごうとしたけど、すでに顔面に水滴が降ってきたあと。


「みどり何してんだよ……!」

「木の幹蹴ったー」

「はあっ!?」

「バラバラ降ってきて楽しいやろーっ?」


自慢げな声が聞こえたけど、ただ迷惑なだけだ。黒い傘は、もはや何の意味もない。

学ランは雨が染みて、さらに濃い黒になっている。


「楽しいわけがあるかっつの……」


はあ、と重い溜め息が出る。


「あー、また溜め息吐いたーっ!」

「なんでもいいから、とにかくちゃんと前見て漕げよ」

「ういー」


もう傘を気にするのは諦めよう。振り落とされる気がしてならない。

自転車は中村さんの山を抜け、またアスファルトの上をふらふらと進む。


「しゅーう」

「なに」

「かゆいー」

「は?」


突拍子もなくそう言ったみどりに、眉根を寄せる。

カサコソカサコソ、雨合羽は音を立てた。