「……馬鹿だ」
小さく吐き出した。
くすっと喉元で笑ってみたけど、それでも視界が滲む。
目を閉じて、手の甲を当てた。
こんなサプライズ、いらなかった。
余計に離れがたくなるじゃないか。
「柊! トーキョー行っても、俺のこと忘れんなよ! いつかビッグになって会いに行くからな!」
「うわー、ありがちー」
「はああああ!? うっさいし!」
「ワタルの声のがうるさいし。っていうかビッグって何よ」
「きょんのがうっさいしな! ビッグはビッグや!」
相変わらず、キンキンと高いワタルの声。
その声に、涙がすっと引いていくのを感じる。
苦笑いしながらワタルたちの言い合いを見ていると、不意に肩を叩かれた。
「柊くん」
そっちに顔を向けると、案の定、巻き髪ハーフアップの相澤で。
夏祭りに見かけて以来だから、何となく久しぶりな気がする。