「柊くーん!」
「しゅうーっ!」
「柊!」
絶句というよりは、開いた口が塞がらないという感じかもしれない。
呆気に取られたといってもいい。
「……なんか、すごいな」
ぽつりと呟いた俊彦に頷く。
自転車に乗ったクラスメイトたちが、集団になって坂を下っている光景を見たら、誰でも驚くだろう。一斉にこっちに向かってやって来るものだから、反射的に逃げたくなったのも無理はないと思う。
キュッとブレーキをかけて俺の目の前で自転車を停めたのは、先頭を走っていた達郎で。
「達郎、あの……」
「びっくりしたやろー?」
この状況は何だ、と聞きたくて口を開けば、どこか誇らしげに白い歯を見せて笑う。
「お別れ会は出来やんかったから、せめて見送りだけでもしようって」
「……え」
「たっくんがみんなに声掛けたんよ」
ふわりと微笑んで、隣に並んだ由香が言った。
「……」
「わ、柊がびっくりしとる」
「……声掛けたって、全員に?」
「ふふ、うん。そうやに」
悪戯っ子のように笑って、頷いた由香。
達郎は照れたように頭を掻いている。
少ないと言ったって、クラスメイトは二十人以上いるわけで。全員に声を掛けるなんて、きっとすごく時間がかかることだろう。
そんな面倒くさいことを、やってくれたのか。