それらをぼーっと眺めつつ、運転していたら。


「うわ」

「なになに、……っわ!」


正面からやって来た小さな虫の集団。

目に入りそうになったのを、必死に瞬きして防ぐ。


「口に入ったーっ!」

「うわー……」


嘆くみどりの声を聞きながら、ほっと胸を撫で下ろす。

良かった、みどりみたいなことにならなくて。

ぺっぺっ、と虫を吐き出そうとしているのを背中で聞きつつ、慎重にペダルを漕ぎ続ける。


「出た?」

「分からんー。多分出たと思うけど、なんか口に残っとる感じー」

「え」


大丈夫なのか、それ。


「まあいっか。多分大丈夫!」


適当なみどりに呆れたけど、本人が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。深く気にするのはやめよう。


キーコキーコ、悲鳴を上げる自転車。

じっとり、額に浮かぶ汗。


田んぼの横を大きく右に曲がる。

そして、ブレーキをかけた。