「それじゃあ、さっきまで二人は何の勉強しとったん?」
「私は数学のワークの解き直しー」
「え、解き直し?」
「夏休み明けに実力テストあるし、ちょっとは勉強しよかなって思って」
ほー、と感嘆の声を漏らし、みどりは達郎に視線を移す。
「俺は歴史の年号カード作っとった」
「年号かー……!」
「社会苦手やからなー」
ちなみに俺は、みどりの国語のワークの答えを写させられていた。丸々一冊、手を付けられていなかったそれは、まだ少し残っている。名前さえも記入されていなかったことに心底呆れたのは、言うまでもないだろう。
「あ、そうだ」
不意に呟いて、立ち上がった達郎。そのまま部屋の奥に消えていくのを見つめていたら、すぐに達郎は戻ってきた。
「何味がいい?」
首を傾げるその手には、見覚えのあるものが握られていた。
「おーっ! チューペット!」
「私、りんごがいいなー」
嬉しそうに手を伸ばすみどりと、さりげなく呟く由香。
「ぶどうぶどう! ぶどうがいい!」
「分かった分かった」
白い歯を見せて笑い、達郎は濃い紫色のそれをみどりに差し出して、白に近い色をしたほうを由香に差し出した。
二人はそれを受け取ると、膝でちょうど半分に折る。