「あ、ずっる!」
「さっさと水出せば?」
「まさかの上から目線……!」
あたしはこんな日なたで汗水流しているというのに。
眉間に皺を寄せれば、また鼻で笑われる始末。どこぞの王様にでもなったつもりだろうか。
「みどー、水出してー」
柊を睨んでいれば、由香とたっくんの声が聞こえた。
急いで蛇口に手をかける。
「いっくよー!」
「はーい」
きゅ、と右に捻る。
すると数秒後、ホースの先で二人分の小さな悲鳴がした。
「出し過ぎたー?」
「あ、大丈夫大丈夫! いきなり出てきたから驚いただけやで」
緑のカーテンに水を撒く二人の姿を遠くに見つつ、そんな返事にほっと息を吐く。
ちらっと校舎の陰に視線を向けると、柊は目を閉じているようで。
「柊さーん、サボりさーん」
「……寝てるんですけど」
「……」
「……」
「てやっ」
いつもの仕返し、とばかりにデコピンをしてみたら睨まれた。
正直ちょっと怯んだのは秘密にしておこう。