鶴さんは優しい表情で微笑むと、ゆっくり手を離してそのまま両手を合わせた。
「ご飯、食べてもいい?早く食べたい!」
「あ、うん」
離れていった温もりに、少しの寂しさを感じながらもうなずいて見せた。
だって鶴さんの誕生日だもの。
彼の好きな料理ばかりだから、早く食べたいと思うのも無理はない。
「ケーキは最後に食べるね。じゃあ、いただきまーす!」
5年ぶりに見る鶴さんは、何も変わっていなかった。
橋を持つ手がちょっと変なのも、ボタボタこぼしながら口に運ぶ雑な食べ方も、合間に「美味しいね」と笑う仕草も、全部昔のまま。
5年前と何も変わりなかった。
それなのに、本当に死んでるの?
じゃあ、あなたは誰?幽霊なの?
どうして私の前に出てきたの?
好きで好きで、たまらなく大好きだった人。
なのに、こんな風に現れるなんて。
あんなに温かい手をしているのに、死んでるなんて。
どうしても信じられなかった。