「ひどい?違うよわ。教えてあげているの。クラスに溶け込みたいなら、その正義感を表に出さないことね。あなたが抵抗すればするほど、沢木さん達に嫌われてしまうわ」

「先生は気付いているんですよね?あたしと柴村さんが沢木さん達にイジメられていること」

「何度も言っているでしょ?うちのクラスにはイジメはないって。被害者ヅラしているあなたにも問題があるの。そもそも、こうやってコソコソいいつけに来るのってフェアじゃないのよ。言いたいことがあるなら直接沢木さんに言えばいいじゃない」

綾香たちに何を言ってもムダだから先生に話を聞いてもらいに来ているのに。

先生という存在が最後の砦(とりで)だったのに。

あたしはその先生にすら見捨てたられたの……?

とにかく、と先生は会話を切った。

「あなたはクラスでうまくやるように努力しなさい?」

腕時計にちらりと視線を向け、あたしに背中を向けて生徒指導室から出て行く先生の後姿を黙って見送る。

あの人に相談しても無駄だった。

若菜先生はイジメがあることを認識した上で、それを隠蔽しようとしている。

イジメなんてないと繰り返し、あたしがどんなに『イジメられている』と主張してももみ消す。

先生はこんな姿になったあたしを見て『大丈夫?』の一言もかけてくれなかった。