「年度内くらい忙しくなると思うけど、三上も忙しそうだし平気だろ」
せっかく仕事モードに切り替えていたのに突然三上くんの名前が出てきて一瞬固まる。沢田さんがニヤリと笑った。
「聞かれたいんだろー、その話」
「なんでですか! 聞かれたいとか言ってないです!」
いや、確かになにも言われないの気になってたけど、聞かれたいとかじゃない!
「……ただ、沢田さんらしくないかなぁと思ってました。噂大好きじゃないですか」
「やっぱりわかってないなー、植木は。お前と三上じゃ面白くないだろう、噂したって」
……面白くない。ああ、だからなんだ、と妙に納得。
「え? どうした?」
沢田さんがいきなり慌ててる。あれ、顔に出ちゃったのかなと私も慌ててぎこちなく笑顔を作ってみる。
「つまんないですよね、私と付き合ってるとか。三上くんかっこいいのに」
「あー、なに? そういうの気にしてんの? ほんっと、お前らかわいいなぁ。ひとり身の先輩の前でちょっとは遠慮しろよ」
お前、ら? 三上くんのこと?
「面白くないって言うのは、意外性がないとか、話題にして三上を喜ばせたくないとかそっちな」
呆れたような口調で、でも沢田さんがフォローしてくれているのがわかった。でも、意外だったはず。
「沢田さんだって、沙耶狙いだとか言ってたじゃないですか。私ととか、思わなかったくせに」
いつも言わないようにしてた卑屈なことを、つい口を尖らせて呟く。私相手じゃ噂しても面白くもないんでしょ。
「確かになぁ。俺としたことが予想してなかったんだよな。あの甘ったれの三上を植木が世話してるとか、今となってはああそうまとまるかって納得できるのに、不覚だったよ」
沢田さんは悔しそうに腕を組み、1人で反省していた。