翌日、仕事帰りに駅ビルで買い物をしていたらメッセージが入った。三上くんかなと思ったら意外な人だった。
【沢田の友達の上野です。仕事中?】
【帰り中です。どうしたんですか?】
【営業帰りで今君たちの駅にいるんだけど、よかったらご飯食べない?】
司令塔の上野さん。急な誘いにびっくりして、どう返そうかちょっと逡巡する。別にいいけど、なんで急に私に?
【沢田に断られたんだよね。あいつ忙しいの?】
そうだ、沢田さんは今プロジェクトがちょっと忙しい。誰かと一緒に食べて帰りたかったという上野さんを断る理由もなく、結局駅で会って一緒に食べに行くことになった。
よく知らない人とご飯って、あまりないのだけれど。またマネージャーやれって言われるんだろうなぁ。類友か、熱くしつこいタイプか。はぁ。
意外にも上野さんはしつこくマネージャーに誘ってくるわけではなかった。こないだかなりしっかり「見るのは好きですけどマネージャーはやらないことにしています」って言ったからかな。
単に私がLINEに入ってきたから沢田さんの代わりに呼んでみた、そんな感じらしい。友達の後輩を呼びだすとか、体育会系ノリかな。
よく知らない人と話すのは得意じゃないんだけど、沢田さんと一緒に話してこんな感じがばれてるから気楽。
「かわいい女子にずいぶんな態度だなと思ったけど、いつもあんな感じなの?」
「最初はなかなか馴染めなくておどおどしてたんですけどね」
「人見知りか。沢田は馴染めるようにと思って構ってるうちに調子に乗りすぎてんだろうなぁ。わかるな」
営業だけあって、上野さんも気を遣わせずに話を続けてくれる。会社の先輩たちといるのとあまり違わない気がして、意外と楽しかった。
「で、真奈ちゃんて三上とつきあってるの?」
「へ? いえいえいえ」
突然聞かれて声が裏返った。 沢田さんは「どうせ安藤狙い」って沙耶のほうと勘ぐってたみたいだけど。
私のほうとって見えたかなぁ。だったら嬉しいけど、三上くんの態度はよくわからない。
「じゃあ今、彼氏いない?」
「今も何も、ほとんどいつもいませんよ」
居酒屋で芋焼酎を飲みながら、残念な告白をする。