「平内さんて、最近どうしてる?」
言うだけあって結構よい食べっぷりでカルビを焼きながら、三上くんが聞いてきた。
「平内さん?営業でも活躍してるって沙耶が言ってたよ。一緒に仕事すること多いみたい」
「真奈ちゃんは会ったりする?」
「開発にも来るかってこと?香さんと打ち合わせしたりしてるから、時々会うけど。どうしたの?平内さんに何か伝える?」
なんだろう。仕事の件で相談があったりするのかな。それだったら自分で連絡しそうだけど。
「いや、そういうことじゃないんだけど」
お肉を見つめたまま、三上くんは口ごもった。
「うん。でもいいや、なんでもない。今の忘れて」
照れたように赤くなったまま、野菜も食べないとねと焼き始めて、ほんとに話を終わらせた。
あれ?これって女の子だったら、平内さんが好きだけど言い出せないとか、そういう状況に見えるけど。
いや、そんなはずないよね、三上くんはなほちゃんって彼女もいたし。でも、両方OKっていう人もいるとも聞く。
まさか。異動して初めてそういう気持ちに気付いちゃったとか?来る途中変だったのも、実は私に何か話そうとか思ってたからだったとか?
私の衝撃に気付いていない三上くんは、いつの間にか立ち直ってサッカーの話を始めていた。
私は一応相槌を打ったりお肉を食べたりしてたけど、話の内容もカルビの味も、ほとんどわかっていなかった気がする。
ビールジョッキを持つ手が、妙にこわばっていた。