三上くんとは、私の最寄り駅の改札で待ち合わせた。地元なんだから穴場のおいしいお店とか期待されているじゃないかと思うんだけど、残念ながらそういうのあまり知らなくて焦る。
どうしようかなと思っているうちに、三上くんがやってきた。私を見つけると、手を振って走ってくる。
「お疲れさま。待った?」
「大丈夫。いろいろ借りっぱなしでごめんね」
紙袋を渡してから鍵も取り出そうとしたら、「とりあえずご飯食べに行こうよ」と遮られた。そうか、路上で鍵の受け渡しなんて怪しいかな。
「真奈ちゃん食べたいものとかある?」
「あ、あのね、地元なのに申し訳ないんだけど、私がっつり系の焼肉ぐらいしかこの辺知らなくって」
「いいね、焼肉。真奈ちゃんが良ければだけど」
「え? 私はいいけど。三上くん、焼肉やさんとか行くの?」
「……行くよ、普通に」
そうなんだ、意外。うちはサッカー男子が二人いるから、外食するととにかくボリューム重視になりがちなんだけど。三上くんはそういう雰囲気じゃない。
私に気を遣ってくれたのかなぁ。がっつり焼肉に誘うとか、ほんとなんか、女子力とかどこ行っちゃったのかなぁ。