胃にしみてたはずの三上くんは、なんだか楽しそうに飲んでるなと思ったら、目を離した隙に寝てしまった。
疲れてたのか、そうだよね。止めてあげればよかった。
私と飲むと飲みすぎるって飲み会で人に言われることあるけど、今日は全然飲ませてないのになぁ。
壁に寄りかかってウトウトしている三上くんに「ベッドで寝たほうがいいよ」と声をかける。うん、とか一応返事はあるので、なんとか励まして立たせて、ベッドに寝かせた。
暑そうにしてるけど、薄手の毛布があったのでお腹にかけておく。
さて、どうしようか。
合鍵はあるからこのまま借りて、近いんだし明日の帰りにでも渡せばいいか。締めないで帰るのも物騒だもん。
食器と缶を片付けて、眠っているので電気も消して、部屋を出る前に一応枕元に座って軽く肩を叩いて声をかけてみる。
「三上くん、帰るね?」
「なんでー?」
意外にも返事があった。なんでって、引越し終わったしと考えて、いや今のは寝言だと気づく。目を閉じたままだ。
「いてよ」
寝ぼけたまま毛布の上に置いた手をつかまれる。ドキっとしたけど、もう寝てる。寝息を立ててる。
なほちゃんと間違えてるのかなぁ、とちょっと切ない気持ちになる。ん? 切なくはないよね、じゃなくて同情する気持ちかな、三上くんに。
寂しがりなの、この人は。うさぎみたいに、さみしさに耐えられないタイプ。
つかまれた手をどうしていいかわからずに、なんとなく座って、眠る三上くんを間近で見ていた。
まつ毛長いなぁ、うらやましい。