4軒目で、これで今日は終わりという部屋にやっと着く。他の3つは、なんとなくどこも同じで、一人暮らしってこんなものかなって思った。

4階まで階段で上っていいかげん疲れたかもと思いながら、鍵を開けてくれた玄関に入る。

わあ、ここいいなぁ。明るいし、窓から外が見えて気持ちいい。西日も入ってこない。表からわからなかったけど、裏は小さい公園なんだ。

三上くんと目が合った。

「ここ、いいよね」

言われてうなずく。いいと思う、うん。

「退去したばっかりで、時期的に動いてないんですけど、たぶんすぐ決まりますね」

「ここ、欠点があるとしたらなんですか」

「4階建てで階段なので嫌がる人もいますけど」

それは平気、と三上くんは細かいところのチェックを始めた。水周りやベランダをじっくり確認した後、営業さんに言った。

「ここに決めます」

あれ、結構決断力あるんだ。

「即決だね」

「条件絞ってるし、あと雰囲気っていうか、あるでしょ」

「うん。ここいいね、空気がいいっていうか。街的にも住みやすいよ、きっと。うち隣の駅だけど、買い物とかこの辺まで自転車で来たりする」

「遊びに来てよ、真奈ちゃん」

「うん。引越の手伝いにも来られるよ」

草食っていうの? 部屋に誘われてもなんか危険なにおいがしない人だなぁ。まぁ同期だし? そんなものかな。

隣の駅なんて香さんと平内さんみたい。いいなあって思ってたんだよね、飲み会の後一緒に帰ってたりして。それで仲良くなったのかな、2人って。


いや別に三上くんとどうとか思ってるわけじゃないけど、最近少し仲良いし、ご飯一緒に食べたりするのは楽しいかなって。近いとお互い気楽だし。うん、それだけだってば。


誰に言い訳してるんだか、私。






お礼にと飲みに行った三上くんに、「本当にすぐ引越しするんだね、どうして?」と聞いてみた。

「大学の時から住んでるとこそろそろ越したかったし、こっちの街雰囲気いいし、真奈ちゃんもいるし。あとね、仕事的にも引越し経験しとくといいかなって」

あ、イナバのウサギ引越しセンター使うんだ。確認のため聞いてみる。

「もちろん。じゃなきゃ意味ないよ。いくつかの会社見積もり取ってみて、どんな風に営業するのか実地で見てみようと思って」

「すごい、仕事のため?」

ちょっと尊敬。そんなこと考えたこともなかった。

「どうせならってことだよ。他にもいろいろ言ったよね」


守秘義務とかあるし、居酒屋で詳しい話はできなかったけど、ウサギは案外楽しそうだ。

よかったね、三上くん。