「あ、そうだ。私のうちってウサギと同じ路線だよ。3つ先」
「ほんとに? 帰りに一緒にご飯食べたりできる?」
「あ、そうだね。うち実家だから、だいたい家でご飯食べちゃうんだけど、連絡くれたら行くよ。遠藤くん達もいるんだよね、ウサギ」
同期とはいえめったに会わない遠藤くん達とは疎遠だけどね。三上くんなら行ったら仲良くやれそう。人懐っこいもん、この人。
「真奈ちゃんちのほうってどう?住みやすい?」
「一人暮らしもしたいと思いつつ、つい実家に居着いてしまうくらいには住みやすい」
単に自炊したりいろいろ考えると面倒かなって部分もあるんだけどね。でも都心にもそれほど遠くないのに昔ながらの住宅街があり、結構いい街だよ。
「そうか。引越ししようかなあ」
そうだね、長くなるならそれもありかもね。長くなるなんて言ったら傷つきそうだけど、意外ともう覚悟してるのかなぁ、三上くん。
なんにせよ、泣かずに立ち直ってくれたようで助かった。私じゃなくてほっとしてるっていう罪悪感も少し払拭できた。
久しぶりにマネージャー的役回りかな、こうやって男の子の話をじっくり聞くのは。
そういうの嫌いじゃない、でもいい思い出だけでもない。
今を遡ること10年くらい前から、私は中学から高校まで、サッカー部のマネージャーをしていた。父と弟達の影響でサッカー好きだったし、人のお世話も嫌いじゃないし、友達に誘われるまま入部した。
こんなはずじゃなかったというほどこき使われつつ、チームメイトとして男子のスポーツに関われる喜びは大きかった。
お茶出しなんかの雑務から、ビデオ撮影、ミーティングの記録まで、毎日忙しく働いてた。
落ち込んだ部員の愚痴に付き合うなんていうのも仕事の一環だと思ってた。
男ばかりの集団で、それぞれに課題や不満があったと思うけど、言わない人は言わないし、吐き出したい人は吐き出したい。吐き出しちゃえば楽になるタイプの人たちは、私たちマネージャーを捕まえてぐちっては立ち直ったりしていた。
ポジション争いとか、怪我してなかなか調子が戻らないとか、いろいろあったなぁ。
でも、そうやって話を聞くのを私の優しさだと勘違いしちゃった子がいて、事態はややこしくなり。色々あって懲りた私は、大学ではサッカーと縁を切った。
見るだけの方がいいよ。関わっちゃいけないんだ。女子は。
そういえば三上くんは先輩の沢田さんのフットサルチーム、入ったのかな、前に誘われてたけど。