圭悟は私を前にポツリポツリと語りだす。
私は目線を下にして、それをただ聞く。

顔は見ない。ただ足元の地面だけ。
早くこの時間が過ぎてしまえばいい、そう思っていた。


「どうしても謝りたかったんだ。もう消えない事実だけれど、ちゃんと会って謝りたかった。だからこうやって会えて良かったと思う」

「……」

「悪かったよ、本当にゴメン。心底反省してる。今でも俺はお前の事が忘れられない、いつでもお前を思い出しては苦しくて仕方なかった」


「……何言ってんの?」

たまらず、そう返す。

結婚しておきながら、他の女と新居のベッドでやらかして、散々人の事を苦しめて。
それでいで、私を忘れられなくて苦しい?

私はもっと苦しかった。
今でもあの時の光景が蘇って、居ても立ってもいられなくなる。


「謝って済む問題じゃない。アンタは謝れば気が済むのかもしれないけど、私は謝られても許せることじゃないんだよ。自己満足もいい加減にして。それに何?忘れられないって。あんな事しておいて、いつまでも未練がましい事を言うのは止めてよ」

「じゃあどうすればいい?どうすればお前と前みたいに戻れる!?」

「バカじゃないの?戻れるわけないでしょう!」

「どうして!俺はこんなに反省してる!」

「反省?ハッ、笑わせないでよ!……ちょっと前にアンタの浮気相手と駅で会ったのよ!女に言われたわ、圭悟に会ってやってくれって、謝りたいからって!まだあの女と繋がってるんじゃない!!あんな行為を見せられて、今でも浮気相手と切れていない相手と、どうやって元に戻れるって言うのよ!」