「あ、そうだ。俺、母さんの店を改装して、昼間にカフェやろうと思ってる」


手を繋ぎながら歩いていると、柳先生が思い出したかのように喋りだした。



「カフェ?」


驚きのあまり、足が止まってしまった。


柳先生が…カフェ?



「そのために一年間お金稼いで、改装費用貯めたんだ。今は料理の専門学校にも通ってる」


「えぇ!?」


柳先生が…料理の専門学校?


「そんな驚くなよ。俺、意外と料理好きなんだけど」

一緒に暮らしていた時、休日は凝った料理も作っていたけど…



先生→カフェって、全く違う仕事。



「喫茶店とかだと、若い子とか入りにくいだろ?カフェとかにすれば、櫻井ぐらいの子達でも入りやすいだろ」


「そうですけど…」


「教師じゃなくても、関われるだろ?」


「え…?」


「姉さんみたいな…櫻井のような、悩んでても人に言えないような子達が気軽に来れて、相談できるようなカフェにしたいんだ」


「…」



「話を聞くだけで、何もしてあげられないかもしれないけど。人に話すことで、その子の中で何かが変わってくれればいいかなとー…」




…柳先生は変わってない。




先生を辞めても、柳先生は柳先生だ。