「マナちゃん!遅刻するわよー」
「はーい」
あれから1年後。
「ほら制服のブラウス、アイロンかけといたから」
「ありがとうございます」
「卒業式なんだから、バッチリきめないとね!」
「はい」
柳先生がいなくなってから、私は柳先生のお母さんの家にお世話になっている。
赤の他人の私を、本当の娘のように思ってくれているのが伝わってきて、毎日が幸せだと感じる。
「じゃあ、行ってきます」
「あ!マナちゃん!」
「?」
玄関で靴を履いていると、リビングからお母さんが走って来た。
「…ずっと黙ってたんだけど…」
「?」
「実はマナちゃんのお母さんから毎月、学費と生活費もらっていたの」
…え?
あの親から?
驚きのあまり、目を見開いた。
「マナちゃんには内緒って言われてたんだけど、こういうのはちゃんと伝えないとって思って」
「…」
「マナちゃんもバイトして、生活費と学費入れてくれてたでしょ?だからそのお金は、貯金してあるの」
「え…」
貯金ってー…いつの間にー…
「だから、お金の心配はいらないからね!高校卒業して、春から大学に入学するんだから!キャンパスライフを満喫してね!!」
バシっと背中を叩かれた。
「いってらっしゃい!」
大きくて手を振り、お母さんが見送ってくれる。
「いってきます!」
それに答えるように、また大きく手を振った。