「そうならないために、櫻井が事情を説明するためにお母さんを連れて来てくれたんだろ?」
ぽんっと頭に、柳先生の温かい手が置かれた。
「お母さんと向き合うの、辛かっただろ?」
辛かった?
そんなこと考えもしなかった。
「柳先生が私たち家族のせいで、何か処分を受けてしまうのは嫌だったから。お母さんに事情を説明してもらうってことしか考えつかなかったから、無我夢中で…」
お母さんのアパートまで走った。
もう顔も見たくないと思ってたのに。
「言いたいこと言えたか?」
柳先生が顔を覗き込んでくる。
「…はい」
母親にあんな感情をぶつけたのは、初めてだった。
「そっか。よく頑張った!!」
「!」
くしゃくしゃっと、頭を撫でられる。
「柳せんせ…」
「もう大丈夫だな」
…え?
そう言うと、柳先生は離れた。