ドクン。
ドクン。
心臓の音が身体に響く。
「櫻井さん、私はちょっと出てきますので…櫻井さんは、ここにいてください」
校長先生が慌てた様子で戻ってきて、そう言った。
ソファーの横に立つ校長先生を、ゆっくりと見上げた。
「…あ…」
柳先生の処分が決まるかも知れないのに、私はここにいていいの?
ドクン。
「櫻井さん?」
私のせいで柳先生が辞めるのに、私は何もしなくていいの?
ドクン、ドクン!
「…校長先生」
ゆっくりと立ち上がった。
「柳先生の処分を決めるの少し待ってください」
「え?」
「お願いします」
校長先生に頭を下げると、走り出す。
「櫻井さん!?」
「櫻井!?」
ドアの前に立っている学年主任の横を通り過ぎ、校長室から走って出た。
「どこに行くんだ!!櫻井!!」
背後で、学年主任の叫ぶ声が聞こえる。
「待ちなさい!!」
けど、足を止めることはできない。
"守ってもらってばかりじゃダメなんだ"
まだ、柳先生を守れるかもしれない。
まだ、私にできることがあるかもしれない。
そう思ったら、走り出していた。
私は、柳先生を守りたい。
その一心で、走り続けた。