通り過ぎたとき、香水の香りがした。 それはとても、強い香り。 「…うん。お父さんは?」 「女のとこじゃないの?知らないわよ。あんな人。じゃ、行ってくるわ」 コツコツとヒールの音をさせ、扉を開けながら言った。 「…いってらっしゃい」 私が言うときには、もう扉は閉まっていた。