わかってはいたが、呼び止められることはない。
もし呼び止められても、あんな母親の顔なんか二度と見たくない。
母親とも思いたくない。
「…あんな奴」
行き先もなく、歩く。
「はは…どうしよう」
涙も出ない。
怒りも感じない。
一気に脱力した感じ。
「…頑張ったつもりだったのにな」
居場所を守りたかった。
柳先生に教師を辞めて欲しくなかった。
私のせいで迷惑をかけてしまうのは嫌だった。
だから、この道を選んだのにー…
自分の力で何とかしたかった。
けど、振り出しに戻ってしまった。
「…柳先生」
柳先生ー…
柳先生ー…
柳先生ー…
頭の中で何度も呼ぶ。
声に出して呼べないから。
柳先生、私はどうしたらいい?