「あんただって返す返すって言って、一度も返してくれなかったじゃないか」

「お前がいつでもいいって言ったじゃねぇか!」

「そうだけど」



目の前の会話なのに、遠く感じる。


久しぶりの、この感じー…



「…はは」



なんか、どうでもよくなってきた。



「おい娘、そんなに金が欲しかったらいいバイト紹介するぜ?」


ぽんっと肩に男の手が触れた。



「触らないで!!!」


バチンと音を立て、男の手を払い落した。


「いってーな!何すんだ!!このガキ!!」



怒鳴られても何も感じない。



「もういい」



母親にそう一言だけ言うと、家を出た。