母親に、期待はしていなかった。
けど、まさかここまでとは思ってもみなかった。
「おい、まだかよ!遅刻するぞ!!」
「!!」
勢いよく玄関が開き、男の人の声が聞こえた。
後ろを振り返ると、母親と同じぐらいの年齢の男がいた。
…誰?
一緒に暮らし始めて3ヶ月は経つが、見たことがない。
「あ?これ話に出た娘か?」
指をさされ言われた。
「そうよ。…あんた、先週貸したお金返せない?今」
先週貸したお金?
「いまぁ?無理に決まってんだろ!」
「この子返して欲しいってうるさくて」
返して欲しい?
この子…私?
「…っ」
まさかー…
私のお金はー…
「あの金、娘の金だったのか。ひでぇ、母親だな」
ドクン!!
目の前が真っ暗になった。