「卒業するまで、一緒に暮らすことを認めましょう」

「!」

「校長!いいんですか!?そんなことを認めたら、校長まで責任を…」

「ありがとうございます!」

いちばん始めにお礼を言ったのは、蘭だった。
頭を下げたまま、なかなか頭を上げようとしない。

「おい…何でお前が泣いてんだよ」

隣にいる榊原が蘭の頭をぽんぽんっと撫でる。


泣いてる?蘭がー…


「だって一緒に暮らすのを認めてくれなかったら、マナは学校辞めないといけなかったんでしょ?だから認めてくれて、ほっとしたの…」

蘭ー…


目に涙が溜まり始める。


「ただし、条件があります」

「!」

蘭に向けていた顔を、再び校長先生に戻した。


条件?


「今まで通り、柳先生と櫻井さんの学校と自宅での必要以上の接触は避けていただきたい。学校行事以外で二人で外出するの禁止です。あと、もし櫻井さんのご両親の気持ちが変わって同居を解消するように求めたら、速やかに解消すること」

あの親が同居を解消しろって言うわけないー…

「わかしましたか?櫻井さん」

「!…はい」

「柳先生もよろしいですね?」

「はい」

「あと、榊原くんに蘭さん」

「「はい?」」

「このことはくれぐれも内密にお願いします。もし世間に知られたら、櫻井さんは退学…柳先生はよくて懲戒免職…最悪の場合は逮捕ってことにもなりかねませんからね」


「「…はい」」

校長先生の話にビビったのか、榊原と蘭の返事が小さくなった。


「以上です。もう行っていいですよ」

「校長!そんな…」

「ありがとうございました」


北川先生の声を遮り、柳先生がお礼を言い頭を下げた。


「…柳先生、頼みましたよ。何度も言いますが、私は貴方を信頼しているから大事な生徒を託すのですよ」

「はい。何かあったときには全て私の責任で…櫻井は必ず守ります」

ドクン。


…柳先生ー…


「本当にあなたは…私はあなたの方が心配ですよ」


…どういう意味?



校長先生の最後の一言が気になりながらも、柳先生と共にもう一度頭を下げると校長室から退室した。